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官能相場小説「愛のなまず(後編)」

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「愛のなまず(後編)」

空港で裕子を待っていると、テレビのニュースが日経平均が過去最高の39800円まで急騰したことを知らせていた。





こんなブル相場の時に『愛のなまず』の原作者である自分が人妻と心中したニュースが流れれば、映画も本もさらにヒットするな、と神部はそのニュースを見ながら思った。





ふと、斜め横に目を移すと、そこには裕子が立っていた。相変わらず、ブラウスがはち切れそうな胸の膨らみだ。



空港からタクシーを走らせて、緑豊かで有名なH市にたどり着いた。食事を済ませた後しばらく自然を堪能して、二人は深夜の森の中に入っていった。季節は夏だったので夜の屋外でも長袖を着ていれば寒くなかった。





黒い闇のなかに白い何かが浮かんで見えた。近づいてみると、それはキャンピングカーであった。恐る恐る開けてみると、鍵はかかっておらず、おそらく乗り捨てられたものだと思った。





暗闇のなかで神部が手当たり次第に壁のスイッチを押してみると、希望を照らすように車中の明かりがついた。





乗り捨てられたにもかかわらず、キャンピングカーの中はベッドやトイレ、冷蔵庫も綺麗であった。「ここにしようか」と神部は言った。あなたとならどこでも、と裕子は短く答えた。





何時間眠ったのだろうか。頭が冴えていた。裕子はまだ隣で眠っている。神部はカバンの中からワインとグラス、ワインオープナーを取りだして、慣れた手つきで開けはじめた。





オープナーで開ける際に途中でコルクがちぎれたら縁起が悪いなと、神部は死ぬ直前の人らしからぬことを思ったりした。





コルクが綺麗に抜けたタイミングで裕子が起きた。「さあ、脱いで」と神部は言った。グラスにワインを注ぐとまずはそのまま2杯続けて飲んだ。そして3杯目をグラスに注いだ時、白い粉を入れて、それが溶けていくのを見守った。





裕子の軀を見るのも最後で、最後交わるのも夫の江藤ではなくて、この俺だと思うと神部の心は得体の知れない満足感で漲った。





あと数十分後には自分たちは死んでいると思うと、いつもより丹念に裕子の胸から腰へ、尻から指先へと軀の曲線に沿って舌を這わせる。乳首のまわりをじらすように指を這わせると、悶えるような息を感じた。





死が間近に迫っているというのに、神部のものはどんどん固くなり、裕子のは潤いを帯びていった。しっかりと固くなったのを確かめると、ゆっくりと入っていく。





目と目で見つめ合いながら、腰を前後に動かしていると、次第に裕子が喘ぎだす。もっと感じるように、後ろから貫き、片方の手で乳首を刺激し、もう片方の手で蕾を刺激すると、より裕子は悶え、もっと欲しいというように臀をくの字に突き出してくる。





神部はその挑発的な体位に耐えられなくなりそうだったが、どうにか向かい合うカタチに戻した。裕子がワイングラスを持ち上げて、それを口に含んだ。そのままキスするように神部に口移ししようとした。





と、その時、神部の身体が激しく揺れた。死ぬという心構えが精神を異常にして、めまいが起きているのかと思った。しかし…なにかが違う。揺れているのは自分ではなく、車体全体だ。これの揺れは今までに感じたことないほど大きな地震だ。





神部は力いっぱいに裕子の身体を突き放した。『愛のなまず』の青年タケシのように、なにかを空売りしなくては、しかし、ワインを飲んだせいで頭が働かない。





スマホを手に取る。こんなに大きな揺れでは東京は混乱に陥いるはずだ。しばらく日本経済は低迷する。とにかくA株、B株、C株を計X万株空売りしようと、神部は売り注文をだした。





一瞬、もう息をしていない裕子の裸体が目に入ったが、「この女はかつて金のなくなった俺を捨てた女だ」ということが脳裏に蘇り、冷たい目で死体を眺めた。俺は生きる。そしてもう一度、作家として『愛のなまず』を超える作品を書くのだ。





急に神部の目の前が明るくなった。希望で目の前が明るくなったのかと思ったが、実際にキャンピングカーのドアが開いたのだった。眩しくてよく見えないが、キャンピングカーのドアが開いて、外には老人が立っていた。





「あんたここでなにしてんの?」とその老人は言った。地震に恐怖を感じて老人がこのキャンピングカーに助けを求めにきたのかと神部は思い、「地震大丈夫でしたか?」と聞き返してしまった。





「地震?」と老人はたいそう大きな声で笑った。神部が怪訝そうな顔をしていると、「あんたそのボタンを押したんだろ」と老人は言った。





「このボタンを押すと、8時間後に震度8の地震が起きるようになっとるんだ。天災は忘れた頃にやってくる、というからな」と老人はいたずらっ子のように笑った。





さっきまで神部と裕子が死を覚悟して結ばれていたのはキャンピングカーではなく、この粋狂な老人の特注品のキャンピングカー風起震車だったのだ。





神部は昨夜、電気を点けるために手当たり次第にスイッチを押した時に、起震のスイッチを押してしまったのだった。





「自分はこれからどうなるのだろう」と神部は途方に暮れた。「この女息してないじゃないか」という老人の声が聞こえてきたが、神部はそこに座り続けて動かなかった。その後2ヶ月間、日経平均は新高値を更新し続けた。

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